JMM 『絶望の中の希望~現場からの医療改革レポート』  特別配信号2

村上 龍氏主催のJMMというメールマガジンで医療に関する配信をしていただいています。許可を頂いて転載いたします。

                          2008年7月23日発行
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JMM [Japan Mail Media]           No.489 Extra-Edition2
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 ■『絶望の中の希望~現場からの医療改革レポート』 特別配信号 

 「社会システム・デザイン・アプローチによる医療システム・デザイン 2」

     □横山禎徳:社会システム・デザイナー


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本文は2007年11月に開催された現場からの医療改革推進協議会の内容に基づい
ています。本文中の図は以下のURLよりご覧いただけます
( http://mric.tanaka.md/yokoyama/yokoyama.xps )
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「社会システム・デザイン・アプローチによる医療システム・デザイン 2」

 

図7

「医療システム・デザイン」の試みをやっていると申し上げましたが、それについて今お話ししてみます。日本の新たな医療システムというものは、「超高齢化社会」経営の文脈内でおたがいに連携する「社会システム」群の一部としてデザインすべきです。単独、かつ独立した医療システムというものは存在しません。「超高齢化社会をどうやって経営するのか」は日本の現在直面している重要課題です。働く人が減るのですから、放っておけば辻褄が合わない社会なのです。それを、何とかうまく乗り切ろうというのが今後多分50年位の課題だと思います。その文脈の中の一部として有機的に組み込まれた医療システムというのをデザインしていかなければいけません。

 まず、現行の医療に存在する多くの悪循環を抽出し、明示します。そして、最終的には医療費削減ではなく、逆に資金が流入することが良循環を作り出すのだという方に発想を転換します。先程の皆さんのお話をお伺いする限り、思った以上に大変だということは分かるのですが、どうしても答えに辿り着けないといけません。議論した結果、少ない資金の制約のなかで皆がもっと努力するということに終わってしまうのではだめで、やはり一番望ましいのは医療システム全体にもっとお金が入って来るようにすることです。

 航空業界を例に取ってみましょう。「ビジネスクラス」の発明が良循環を生んだのです。1970年代初頭の航空業界というのは最悪の状況でした。皆利益が出るかでないかで、機材更新が出来ませんでした。したがって、飛んでいる飛行機の寿命が30年を超えるという状況になりそうでした。数年前、某航空会社の30年物の747が空中分解したように、やはり、30年を超えると安全性に問題があります。70年代の航空業界は大変なことになるという予測でした。ところが、70年代の半ばから後半にかけて航空業界は「ビジネスクラス」というものを発明しました。これは、フルフェアを払ってくれる企業が相手であり、普通「ちょっとまけてよ」とは言いません。料金を定価どおり払ってくれます。航空業はお客が定価どおりに払ってくれれば儲かります。ほとんどディスカウントしているから儲からないのです。企業相手であればフルフェアであるということです。そこがミソであって、だから「ビジネスクラス」と言ったわけです。これは、予想以上に当たって、急速に航空業界は潤いました。そのおかげで最新鋭機の開発が進みました。すなわち第四世代の機材と言いますが、767、777、747─400、737─700、737─800と続々ボーイングから出てきました。エアバスも300というのはそうではないのですが、エアバス320、319、330、340を含めて全部が第四世代の機材です。

 皆さんご承知ではないと思いますが、驚くべきことに2000年から今日まで先進国のエアラインにおいて第四世代の飛行機での死亡事故はテロ以外今の所ゼロです。その位安全性が保たれています。確かに機材破損事故は結構あります。この間も、中華航空の737─800が燃えましたが、あれも死亡者ゼロです。だから、やはりお金がシステムに入ってくると安全性が高まるのだということです。貧乏人は古い飛行機に乗りなさい、「ビジネスクラス」の客以上は最新鋭の飛行機に乗せますということはありません。そういう差別はできないし、ないのです。747─400というのは非常に安全性の高い機材なのですが、ファーストクラスやビジネスクラスの客だけではなくエコノミー客もどんなタイプの客も皆乗っています。システムにお金が入るということは皆が得をするのだというように発想すべきです。だから、医療システムの中にお金が入って来るということが大事なのです。それをどうやって成し遂げるかということですが、対厚労省的には皆が自己規律を持って無駄遣いしない仕組みになったのだから、必要なお金を使っても良いのではないかという方向に発想を転換してもらうべきです。しかし、あの人達が簡単に発想を転換することは無いということは先程のお話を聞いていてよく分かりましたので、やはりこれは絶対に無駄遣いをしないぞというように仕組みを作り上げて見せることが必要です。

 それから、医療における貧富の格差の是正も潤沢な資金があって初めて可能なのです。「医療に関しては皆平等であるべきで、お金持ちがお金で命を買うことはよくない」と言う人はたくさんいます。では、その代わりとしてどうしてくれるのかということです。世界には治療法があるのに使えないではないのかという疑問があります。これにはちゃんとした答えが返ってきません。そうではなくて、潤沢な資金が入ってくれば本当に貧乏な人は医療費タダで治療をやってあげても良いのです。すなわち、お金がある人からたくさん取って、その一部を「医療基金」としてプール出来れば良いじゃないかという発想の方が、まだ素直ではないかと思います。

 それから、多少の時間差は勘弁して欲しいと思います。例えば、人工透析という治療法が出て来た時に、アメリカの人工透析の必要な患者数と人工透析のキャパシティにものすごく格差がありました。そのためどういうことをやったのかと言いますと、この人を生かしてこの人を殺すという判断をする匿名の委員会で人工透析を受ける人を選んでいたわけです。それは非常に悲しいことであったのだけど、別にお金持ちが選ばれたわけではありません。要するに、「生涯価値がある人」が選ばれたわけです。といっても頭のいい人という意味ではなく、小さな子供等の扶養家族の多い人というような意味です。そのような時代を経て今や人工透析は日本だけで2兆円位使う時代が来ているわけです。だから、必要な人は誰でも治療を受けることができるまである程度の時間差というものは少し許してもらいたいということです。

 それから、すぐに市場メカニズムに走るというのも私は反対です。市場メカニズム自体の持っている問題というものがかなりありますから。まだまだ他に工夫の余地があるはずだというように考えるべきです。切磋琢磨のためのある種の競争はあるにしても全面的に市場メカニズムによることなくPayer、Provider、Patient、すなわち、保険者、医者、患者、それと行政、司法、マスコミにお互いの関係から自己規律を作り出す良循環を見つけるというのが医療システム・デザインの目的です。先程申し上げたように、「超高齢化社会」経営というのは、日本の最大のテーマです。放っとけばつじつまが合う形では回らないというのは明らかです[図5]。このままでは日本の財政は回らないというのは、今松田さんの数字でご覧頂いた通りです。それを、うまく回す方法を見つけ出さないとばいけません。例えば、65歳で労働人口ではなくなるというのがおかしいのではないでしょうか。電車に乗った時、シルバーシートは老人のために取っておくべき所だということで座らないようにしたら、私も1ヶ月前に65歳になりまして、シルバーシートは私のためにとってあるので、座って良いのだということに気がついて愕然としました。でも、まだ座る気はないぞという気持ちです。例えば、そういう人のために高齢者雇用システムというものが必要なのです。

 今の団塊の世代も2人に1人が90歳を過ぎても生きていくのなら働いてもらうのが一番良いのだし、日本人特有の価値観に基づいたシステムだと思います。というのは、私は半分フランスに住んでいるのですが、フランス人は本当に引退することを夢見て生活しています。皆が言う通りです。でも、日本人は引退することを夢見て働いていません。やはり何かの仕事をしていたいのです。それが、緊張感を作りだし、結果として健康で長生きに繋がります。そういうことを考慮に入れた日本独自の高齢者雇用システムが必要なのです。例えば、3日働いて4日休むというようなパターンの雇用です。それだったら二カ所に住んで、別荘ではなくて東京半分、どこかの町に半分という生活をすると、家を二つ持ち、一人二役の生活になりますから耐久消費財に関するかぎり消費人口が倍になったようなものです。そのためには、高い新築住宅ばかりではなくて、既存住宅も安く買いたいということになります。

 今、日本の既存住宅の市場というのは15万戸しか売れていないです。アメリカは600万戸売れています。なぜかと言いますと、要するに既存住宅市場を政府が育ててこなかったのです。新規需要の「一次市場」に比べて既存品の流通市場である「二次市場」というものは自然発生的であり政府はコントロール出来ないから嫌います。それは分かります。アメリカの鉄砲の市場というのは、大体4割が「二次市場」で動いているといわれています。ですから、コントロールが効きません。そういう面もありますが、自由度の大きい「二次市場」の発達は経済に厚みを与えてくれます。日本は非常にコントロール志向の強い政府のおかげでここまで発展して来たのかもしれないが、ちょっともう勘弁してくれないかということです。官僚のパターナリズムから脱しないといけない時期に今来ているわけです。そのようなパターナリズムでは育たないものが多いのです。「二次市場」もそのひとつだといえるでしょう。特に、既存住宅の流通を組み込んだ住宅供給システムは「超高齢化社会」の消費活動として必要なのです。

 それから、日本人が減るのだったら、外国人にもっと来てもらうことを推進すべきでしょう。そのためには旅行者という短期滞在者であっても、住んでいる人であっても、消費してくれるのであったら、どちらも大事なのだと発想することです。政府の観光立国の目標は1000万人です。1000万人というのは、消費という視点からはほとんど足しになりません。何で1000万人という目標を掲げたのか私には全く分かりません。私だったら、5000万人にします。世界では、フランスが7000万人、スペインが5500万人、アメリカが5000万人ですし、中国はもうすでに3000万人から5000万人の外国人旅行客規模になっています。何で日本は1000万人なのだという中途半端なことを言っているのか分かりません。ほとんど、分かっていない人達が組み立てているということです。新しい仕組みを組み立てる能力が欠けているのです。だから、政府もあまり信用出来ないなということなのです。頼っていても仕方ないという状況です。

 それから、生活資金を保障するシステムというものもあります。まだまだこれだけではないのですが、こういう「社会システム」群が全部繋がっているのです。それらのシステムのトータルとして「超高齢化社会をどうやって経営するのか」ということに答えないといけません。そうすると、これは明らかにかなり高度なデザイン能力が必要だなということがお分かりいただけるはずです。今、お役人がこういうことをデザインする能力訓練がされているのかいえば、されていません。法律を作る訓練はされています。法律を作る前に制度設計ということもやられています。しかし、一省庁内の権限の幅で制度設計するという能力は訓練されているけど、こういう複雑なシステムを省庁横断的にデザインする能力の訓練はされていません。松田さんは財務省ですけど、優秀な官僚であると思います。しかし、優秀だったらゴルフはうまいのか、テニスはうまいのか。一緒にやったことは無いけど全くゴルフは下手くそだと思います。要するに、練習しなければ上手くなるわけがありません。今の官僚というのは、こういうシステムをデザインする練習をしていないです。それが、いろんな所で歪みとして出て来ています。練習していないのだからデザインの能力はありません。

 これまでの官僚は先進事例が存在する世界で生きて来ましたし、小さく間違っても高度成長がその間違いを消してくれるという状況の中にいたので、官僚の無謬性という神話ができあがったのです。誰が言っているかと言いますと官僚が自分でも言っています。要するに、「インディアン嘘つかない。官僚間違わない」と思っているわけです。しかし、そのような時代はすでに終わっているわけです。今の時代は「間違ってごめんね。やり直させてくれ」と言えば良いのです。例えば、住基ネットは400億円を使って全くの失敗です。「ごめん、やり直させてくれ。システムは一発では決まらないのだ」と言えば良い話です。ですけど、言えません。それが、いろんな問題を起こしています。要するに、「ごめん」と言えません。日本政府も安倍首相もそうでしたけど。「ちょっとやり直させてくれ」ということを言えない限り、システム・デザインということは出来ません。システムは絶対に一発では決まらないからです。ここが、基本的な思考の転換が必要なところなのです。日本の医療の世界の人たちは「世界に冠たる健康保険システム」だといっているのですが、本当にそうだと思います。構想を始めたのは1955年で、その当時の日本は立派な発展途上国だったのです。就業人口の44%が農林水産業の従事者だったわけです。その時代に国民皆保険のシステムを組み立てたのです。お医者さんに安く診ていただけるだけで嬉しくて涙ぐんでいるという時代でした。当時、ほとんどが感染症であって、貧乏国だから心と体が両方病気になっているのはわかっていても体を治せば心もついて来るだろうという前提でやってきたわけです。

図8

 1961年に健康保険システムは実施されたのですが、1964年に完成した東海道新幹線は、世界銀行からお金を借りています。発展途上国にお金を貸すのが世界銀行で、まだ世界銀行からお金を借りることができる時代に日本は健康保険システムというものを作ったのです。それは、たいしたことなのだということは納得します。でも、今は違うのだということを認めて欲しいのです。やはり、今は大枠としては慢性病の時代であり、完全には治らないのだけど、でも最後まで心と体でバランス良く活動出来るようにして欲しいなと思っているわけです。では、今の健康保険システムが、それに応えるようになっているかと言いますとなっていないということです。「健康は消費」ということをいっても、別に目くじら立てる方はおられないと思うのです。すでに政府の発行する資料のサービス消費という項目の中に健康というものがありますから、政府も健康というものはサービス消費だと思っているわけです。だけれど、ではそのように組み立てているのかということです。考えてみると、健康というのは高齢者による最大の消費分野であって、1970年代からこれまで常に消費トレンドの先端にいた団塊の世代による新たな消費トレンド形成の機会であります。

 ご存知のように日本は今、消費が伸びていないのです。バブルの崩壊後、景気の底を打ったのだけど成長軌道に乗らないのは国内消費が伸びないからです。日本というのはほんの最近までGDPに占める輸出の割合というのは9%で、世界でも二番目に輸出比率の少ない国でした。90%は国内の経済活動で回っていたのです。それが今、15%まで上がっています。大半は中国への輸出依存なのです。その理由は、国内消費が伸びていないからなのです。なぜ消費が伸びないのかと言いますと、バブルの崩壊だ、失われた10年だと言って騒いでいた時期に静かに起こったのは、日本の人口の半分が50歳を超えたということです。皆さんは、50歳を超えておられる方もおられると思いますので、お酒の消費量をお考えになるといいです。ビールの消費のピークは50歳です。45歳から50歳が一番消費しています。あとは、ダラダラと落ちて60歳でポトンと20%位落ちます。そういうサイクルに入っているから、放っとけば消費が伸びないのです。

 また、日本の平均寿命が世界一で、しかもまだ伸びていると非常に誇らしげに新聞などで書いているのですが、ある意味ではこれは最悪のニュースなのです。なぜかと言いますと、90歳を超えて貴方のお父さんやお母さんが亡くなると相続人である貴方はすでに60歳を超えているわけです。相続してもお金を使いません。最近は、貯蓄から投資へと言われて、そうかということで、アメリカの財務証券やニュージーランド国債など、外国の証券が入った投資信託を買います。これは、私が言う所の消費ではありません。貯めるのではなく使ってもらわないといけません。国などが調査で「何でお金を貯めているのですか?」と聞くと、「老後のため」と答えます。もしくは、「まさかの時のため」と答えます。私に聞かれても、「老後のため」と言うと思うのですが、言ってみれば、お前はもういい老後だから使ったらどうなのかという歳なのです。でも、皆使わないわけです。だから貯まってしまいます。

 実際に、高齢者が今どの位持っているのかと言いますと、よく新聞で1500兆円の個人金融資産という話が出ますが、1500兆円とは別に非金融資産の土地、建物、書画、骨董が2000兆円あるそうです。個人にめちゃくちゃお金がある国なのです。しかも、60歳以上がその両方の大体7割方を持っているわけです。2500兆円あるわけです。個人の借金の大きなものは住宅ローンですが、すでに払い終わっています。ということで、実質2500兆円あるということは、単純に計算しても毎年50兆円以上の相続が発生しているわけです。今、表に出ているのは30兆円位で、2兆円位の相続税を取っています。50兆円はもう発生しているわけです。それをどこかに隠しています。

 一方、税務署員というのは相続税のようなストック課税の捕捉能力が弱いのです。元々難しい上によく訓練されていないからです。それなのに、日本政府は小さな政府という馬鹿な掛け声の下に税務署員が5万6000人いるのを平成12年から平成22年までに10年掛けて1割、すなわち、5000人以上減らしています。他省庁と横並び削減なのです。税務署員が色々やりとりしているサイトがあってそれを見ますと、手が回らず、もう悲鳴を上げています。捕捉率は落ちています。だから、消費税を上げる前に相続税の捕捉率を上げることをやっていただいた方が良いと思います。どんなに甘く見積もっても税全体で最低5兆円は取りっぱぐれています。

 要するに、相続しても使わないという状況を変えないといけません。それは、高齢者に消費させることです。ものであればすでに全部持っています。必要なのはサービス消費です。サービス消費で一番魅力あるのは、健康医療に関するサービス消費です。この消費を押さえ込むことはないのです。そういうと、「お金持ちが命をお金で買おうというのか」という人がいますが、それは少し飛躍じゃないかということです。日本全ての医療行為の中で本当に命に関わるものは何%なのだということです。そういう統計も絶対に無いと思いますから、誰も知らないと思います。大変大甘に見て30%位ではないでしょうか。7割が命に関係無い医療行為なのです。命をお金で買っているのではないのです。

「国民医療費」と言いますと、経費、すなわちコストです。当然、コストはカットすべきなのです。コストを増やそうという経営者は一人もいません。コストと言った途端に自動的に削減と言うわけです。だから、「国民医療費」という言い方は、やめたらどうかと思います。「消」という字を一字加えて「国民医療消費」と言った方が良いのではないかと思います。消費は何も生産せず、基本的に浪費だからよくないと思っている人がいるのですが、そんなことはありません。例えば、CO2を削減するためにトヨタは燃費が飛躍的に優れたプリウスを作っています。プリウスには新しい色々な部品が必要です。トヨタは新しい部品の消費をするわけです。それを皆さんが買うわけです。だから、消費は浪費ではありません。浪費もあるけど、良い消費もあります。だから、健康というのは良い消費なのだと。そのためには、自己規律があって、患者も無駄な安易な医療消費行動をしないし、医師も安易、かつ過剰な医療行為をしないというような所へ持っていけば良いではないかと思います。しかし、健康・医療という消費の健全な育成に関する多くのテーマは厚労省の得意分野ではありません。彼らも、「そうだ」と言うと思います。

 医療消費とは医療の提供する「価値」を消費すると考えるのです。この「価値」、あるいはバリューというのは、感覚的にいうと、かかっている人件費の4倍以上の値段を取ることができるということです。このように、バリューで考えると、「国民医療消費」100兆円というのは、そんなに非現実的な話ではありません。そのうち、国が面倒をみなければいけないのは、3分の1強位で抑えるというやり方もあります。それが、システム・デザインなのです。システムにお金が入ってくると色々な応用が出来ます。本当に貧乏な人にはどんな医療でも無料ということが出来ます。お金持ちも貧乏人も一律3割自己負担という方が却って不平等になっているのではないでしょうか。特別な場合、完全無料というのは、実際に日本に存在しています。私は、原爆の被爆者で特別原爆手帳を持っていますから、医療費は完全に無料です。国に悪いから使ったことは無いですが、無料という世界がすでにあるのであり、それをもっと広げてもいいではないかということです。

(第3回に続く)

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横山禎徳
1966年東京大学工学部建築学科卒業。建築設計事務所を経て、72年ハーバード大学大学院にて都市デザイン修士号取得。75年MITにて経営学修士号取得。75年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社、87年ディレクター、89年から94年に東京支社長就任。2002年退職。現在は日本とフランスに居住し、社会システムデザインという分野の発展に向けて活動中。
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