死因究明制度「創設すべき」が大勢 <都道府県医師会アンケート>

3月10日付けでじほう社( http://www.jiho.co.jp/ )から配信された情報です。

日医が厚生労働省案に賛同していることが報道されています。多くの勤務医が日医に失望するでしょう。
死因究明に関してニーズがあることは賛同しますが、厚労省案の内容に問題があるために地方医師会が危機感を覚えているということが伝わっていません。

 厚労省案の問題点は以下のように考えています。


 


1) 事故調での法的判断

 「重過失は警察へ」と規定してしまったら、際限なく医療を刑事の対象とすることができてしまいます。医療界は、「重過失か軽過失かの分類は医学的にできない。分類すべきではない」と主張しなければならないと思います。
 国家による唯一の死因究明機関がたちあがり、法的判断を下せば、その部署に様々な弁護士・メディアからの圧力が予想され、民事裁判の激増するでしょう。

2) ペナルティーを伴う届け出の義務化

 不適切な行政処分の激増が予想されます。一昨年の医師法7条の3追加、本年の医療法改正による厚労省の立ち入り検査(既に自治体がやっているため、屋上屋を重ねることになる)など、厚労省は統制強化を目指すのが明らかです。現在の医療醸成は国家による統制によって改善しません。


第2次試案以降、自民党案もその後の検討会の議論も、表現をマイルドにしているだけで、上記の2点に変更はありません。
本質的な問題点は変っていない状況で、第3次試案でどのように変更が加わるのが注目してみたいと思います。

 

以下、情報の内容です。
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■ 死因究明制度「創設すべき」が大勢 <都道府県医師会アンケート>

 今国会へ提出されるかどうかに注目が集まる医療安全調査委員会(仮称)を柱とする死因究明制度について、ほとんどの都道府県医師会が同制度の創設に理解を示していることが、日本医師会の内部調査で明らかになった。調査委員会の報告書が刑事訴追に利用される可能性があるなどとして、医療関係者の一部からは依然として反発が残っているものの、刑事訴追される範囲が現行制度より限定的となる新制度の趣旨について理解が進みつつあるようだ。
 アンケートは2月21日に各都道府県医師会に送付、29日までに47医師会すべてから回答があった。調査結果によると、「制度を創設すべき」が16医師会で、「今後、明らかにしなければならない点はあるが、創設すべき」の27医師会までを合わせると、43医師会が制度創設に理解を示していた。一方、「この制度は、創設すべきでない」は4医師会だった。


※日医の木下克之常任理事のコメントも引用されていました。以下、要約します。

6日に「新たな死因究明制度等に関する都道府県医師会担当理事連絡協議会」を開いた。いろいろな意見があったが、理解は深まったと思う。今後は、よりよい制度にするよう努力する。
調査委の設置は「刑事訴追重視の流れを大きく変えることが可能になる」と考えている。
刑事訴追される範囲が現行制度より狭くなるのは、例外的な「重大な過失」を除いて、再教育を中心とした行政処分を実施することで「刑事司法が後ろに引いた運用を目指している」ので理解して欲しい。


■ 今月中にも死因究明制度3次案 <日医も要望>

 日本医師会の木下克之常任理事は本誌の取材に応じ、医療安全調査委員会(仮称)を柱とする死因究明制度創設に向けて、これまでの議論で明らかになった方向性をふまえた制度案(第3次試案)の策定を厚生労働省に対し求めていく考えを示した。木下常任理事によると、6日の担当理事連絡協議会でも、厚労省が昨年10月に公表した「第2次試案」をベースに質問が寄せられていたケースもあるとのべ、「(検討会などで明らかになったことを含めて)第3次試案として明文化してもらいたい」と重ねて要求した。

※以下、要約します。

厚労省の検討会の他、10月に第2次試案を策定、12月に自民党も死因究明制度の骨格を公表し「政府における留意事項」をまとめた。
厚労省検討会では「第2次試案が残っており、医療現場ではそれを基に議論している状況」と問題視し、自民党の留意事項への対応を含め「第3次試案」として新制度の方針を今月中にも示すことになりそう。