予防接種部会の論点 

 本日、予防接種部会が開催されました。議論の内容は極めて問題がありました。

1) 黒岩祐治委員の発言。役人に無視されましたが、患者さんの親御さんも傍聴しておられる場で、意義ある発言だったと思います。

● 新たにつくる臨時接種は「勧奨」するが「努力義務」はないことについて
  そもそも予防接種とは何か。根本的な議論は先だ、当面、当面と言われるから仕方ないが、根本的なことも考えておかないといけない。そもそもシンプルであるべき。定期接種と臨時接種、一類と二類、努力義務と勧奨など、どんどん複雑にすることに疑問を感じる。根本的議論をするときには、すべてちゃらにして議論する。

● 新たにつくる臨時接種は実費徴収可(自己負担あり)とすることについて自己負担があるといいながら、自治体が負担して、国民は払わないことが多いと聞いた。国民にわかりにくい。この区分けは、「国が払うか」という点であって、自己負担は自治体によって違う。調査も含めて、示してほしい。

●優先順位について
  どんなに勉強しても腑に落ちない。国が人の命に順位付けするのか。取りあえずと言われたら仕方ないが、本来は国民にワクチンが十分ある状態にする、国産・輸入と分ける必要なく、十分量を用意できるようにすべき。国が命に順位付けすることを法律に書くべきでない、省くべき。

●メーカーに協力を求めることについて
  (法律で)協力を求めるとはどういう意味か。命令でもない。ビジネスの世界で、売れるんだから作るだろう。法律にわざわざ書きこむ意味があるのか疑問。この案は色々書き込みすぎている。前回をどう生かすか。あとは政治の判断。内閣が命をかけて、必要があるなら順位を決めればよいのではないか。すべて細かく法律に書く必要があるのか。

2) 問題点

  飯沼理事が、医療機関への調査・報告徴収の点について、会員の意見を聞いたら法律の文章にこれを入れるのは賛成できない、「国が定めた優先順位に従わずに接種を行う医療機関が見られたところである」という文章を会員が見たら怒りますよ、アンケートで「それでは予防接種に協力できなくなる」という意見もあった(これは脅迫になるからあまり言わないが)、自浄作用でやるという前回発言は変わらない、と発言してました。この点は事務局預かりになりましたが、この調子では無視されて、何も変わらない内容で次回(2月19日)決まってしまうのでしょう。

今回増えた情報が2点あります。

1)新たに作ろうとしている臨時接種は、「国が勧奨するが、国民に努力義務はない」という新たな(中途半端な)類型をつくり、補償金額も一類(努力義務あり、死亡時4200万円)と二類(努力義務なし、700万円)の中間の金額にするようです。

2)新たに臨時接種をつくっても、保健所等ではなく、医療機関にやらせるようです。「国が定めた優先順位に従わずに接種を行う医療機関が見られたところである。・・・実施主体である委託者(都道府県又は市町村)が負う以上、委託内容が適正に行われているかどうか委託者側が確認できる仕組みが必要である(資料3P8)」と書かれています。現場の事務作業・報告義務など、現場の混乱を繰り返します。

必要のない法改正を無理にしようとしているのは、昨年やったことの責任を問われないように合法化することが目的と思われますが、語るに落ちた発言がありました。一類・二類以外でも臨時接種にできるようにした方がよいのでは(A型肝炎が特定地域で流行とか、狂犬病が日本の野犬に流行とか)、という意見に対して役人がこう答えました。

「予防接種法2条2項8号に「前各号に掲げる疾病のほか、・・・政令で定める疾病」があり、これで指定すれば一類疾病となるので、臨時にすることもできる。法律上は対応できる」

ではなぜ昨年、新型インフルをここに加えなかったのか?という、役人がひた隠しにしているそもそも論に触れました。

●先送りされた根本議論は、
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/s0209-4.html

資料3、P9末「III議論が必要と考えられる事項」に矮小化されており、これまでも部会で指摘された内容は無視され、今回「とりあえずパッチを当てる」とした法改正が既成事実化され、これを前提とした議論になります。たとえば、そもそもシンプルであるべき、なぜ複雑な区別を作るのか(一類・二類、努力義務・勧奨、補償金額の差、自己負担の差)、なぜ法に書き込む必要があるのか(優先順位、メーカーへの協力、医療機関への調査・報告徴収)などです。1~2年かけてじっくり議論すると、第1回で言っていたと思うので、今の政務三役がいなくなり、政治体制が変わっていることを想定して、時間稼ぎ・お蔵入りを目指す作戦と思われます。ヒブワクチンなど他の疾患の法定接種化、無過失補償、免責制度などの根本問題は、役人は全くやる気はないということです。