医薬品行政改革:公務員回帰か、それとも機構の独立権限強化か

 

■Nikkei Business 2008-06-27
公務員回帰か、それとも機構の独立権限強化か、医薬品行政巡り重要提案
http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp?jreq=btjnews&newsid=SPC2008062756530
 

全文が下記のブログで引用されています。
(産科医療のこれから 本日の医療ニュース 6月28日)
http://obgy.typepad.jp/blog/2008/06/post-1341-67.html

7番目に記録してある記事です。

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公務員回帰か、それとも機構の独立権限強化か、医薬品行政巡り重要提案
Nikkei Business 2008-06-27

http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2008062756530
 厚生労働省の「薬害肝炎事件の検証および再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会(以下、検討委員会)」の第3回会合が、2008年6月30日に開催される。この会合では事務局が中間とりまとめ案を提示するが、この中に日本の医薬品行政の仕組みを大きく変える提案が盛り込まれていることが本誌の取材で分かった。この検討委員会は、フィブリノゲンによるC型肝炎感染問題が被害者と国との間で決着した際に、再発防止策の一環として設置が決まったものだ。肝炎事件の原因や実体の検証、再発防止のための医薬品行政のあり方を検討するのが目的となっている(関連記事)。そのため、副作用情報データベースの設置や専門家の増員など、医薬品の安全性確保に直接つながるような議題に目が行きがちだが、この検討委員会が医薬品業界に与える最大のインパクトは別にある。医薬品行政の本丸である承認審査にかかわる組織のあり方を、大幅に見直そうとしている点だ。

 この点について中間取りまとめ案には、2つの案が盛り込まれている。1つは、承認審査や安全対策を含むすべての業務を厚労省内の1つの組織(例えば医薬食品局)にまとめる「役所化案」。もう1つは、すべての業務を厚労省とは独立した非役所の組織に任せる「非役所化案」だ。いずれの案も、医薬食品局と独立行政法人医薬品医療機器総合機構に分かれて二重行政化しているため非効率との批判がある医薬品行政を、1つの組織に集約しようとしている点では一致している。役所化案は、医薬食品局が総合機構を吸収合併することを意味し、医薬品行政に携わるのはすべて公務員(総合機構の職員は見なし公務員)となる。承認申請の審査結果などは審議会が大臣に答申する。

薬事食品衛生審議会の廃止を意図

 一方の非役所化案は、総合機構の権限、機能を強化しようというものだ。現在、総合機構の承認審査の結果は、医薬食品局が運営する薬事食品衛生審議会での議論を経て最終答申となり、大臣に届く形を取っている。非役所化案では、審議会をスキップし総合機構の審査結果が直接大臣に届く形を取る。

 厚労省内には、役所化案、非役所化案を推すグループがそれぞれ存在する。しかし数から言えば、医薬食品局を中心とする役所化案グループが圧倒的に多い。非役所化案は、医薬食品局の権限の大幅な削減を意味する。役所化案が実現すると公務員が大幅に増加するため行革の流れに逆行しているとして批判が出ることも考えられる。しかし、「厚労省所管の社会保険庁が2010年に非公務員型の日本年金機構に改組されるため、公務員数問題は解決できる」(厚労省のある職員)。

 非役所化案を推すグループは、医薬品の有効性、安全性を評価する過程を専門家に任せるべきとの考えを持つグループだ。「現在の仕組みでは、審議会を経由することで大臣に答申が届く前に専門家以外の思惑や政治的な判断が入り込み、純粋に科学的な評価がゆがめられることが多い」との認識を持っている。「終身雇用前提の役所型の組織では、純粋に科学的な見地からの評価や安全対策よりも組織の利益を優先させるおそれがある。HIV感染事件など過去の薬害事件も、役所型組織が原因の1つとなっている。イレッサやフィブリノゲンの副作用問題がオープンな場で議論されたのも、独立行政法人である総合機構だからこそ可能だった。専門家として自由に発言や意思決定ができるように、新組織では民間企業や大学などとの間の人材流動性をより高めるべきだ」と役所型組織の弊害を指摘する。役所化案グループはその案の実現に向け、水面下で各所への働きかけを開始しているとされる。検討委員会の委員は全部で20人。このうち、役所化案、非役所化案への支持を明確にしているのはそれぞれ5人程度で拮抗している。鍵を握るのは、薬害被害者団体関連ぁw)€フ委員たちである。

舛添大臣は非役所化案を支持

 薬害被害者団体関係者は一般に、「医薬品の安全対策には国が責任を持ってあたるべきだ」として、非役所型の組織が医薬品行政に携わったり、組織に民間企業出身者が入り込むことに否定的な意見を持つ傾向が強い。そのため、役所化案グループは薬害被害者団体関連の委員の取り込みに自信を持っているようだ。自民党の科学技術創造立国推進調査会は6月初めに、医薬品行政を一手に所管する医薬品庁の創設を提言したが、この提言も役所型組織を前提にしているという意味では役所化案に近い。非役所化案グループの拠り所は舛添要一厚労相である。舛添大臣は、非役所化案を強く支持しているとされる。実際、重要事項の決定が審議会や協議会を通さないと進まない現在の厚労行政の仕組みについて、「壮大な無責任体制になっている」と批判する発言を行っている。

 6月30日の中間とりまとめ案公表以降、2つの組織改革案を巡る綱引きの激化は必至。事務局は議論が紛糾した場合に備え、既に7月7日を予備日として用意しているという。(河野修己)