日本学術会議のHPに、2008年2月14日の対外報告として、法学委員会医療事故紛争処理システム分科会の対外報告が掲載されました。
日本学術会議は、日本の人文・社会科学、自然科学の全分野の科学者を代表する最高権威であり、そこで医療ADRの有用性が認識されたということは、意義のあることだと思います。
「医療事故をめぐる統合的紛争解決システムの整備へ向けて」
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/2008.html
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t51-1.pdf
1 現状及び問題点
・ 現在、医療の様々な領域で萎縮医療、防御医療といった現象が生じており、民事・刑事両面での訴訟もそのひとつの要因となっている。
・ 医療事故紛争解決領域では、訴訟以外に有効な紛解決制度は整備されておらず、ADR(裁判外紛争解決)を含む有効なシステム構築は喫緊の課題である。
2 提言の内容
(1) 院内医療メディエーターの配置
・ 事故直後の初期対応において、誠実な対応を求める患者のニーズに即座に応答し、サポートしつつ中立的立場で対話と解決を促進する院内医療メディエーターを各医療機関が配置するよう促進する。
・ 医療者を主たる対象とし、その専門性と倫理性を担保する研修教育システムを整備する。
(2) 第三者医療ADR機関の育成・整備
・ 院内での解決が不能・不適である場合に、受け皿としての第三者ADRのシステム整備を促進する。
・ 患者側のニーズの多様性に応じた様々なタイプのADRを準備するため、民間の多様な試みを活用し、その有機的連携を図る。
(3) ADR整備の責務と方向性
・ 萎縮医療・医療崩壊は、医療者の問題でなく、適時に適切な医療を受けられなくなる国民一般の不利益に関わる課題であり、その一因である紛争解決制度についても、諸外国同様、国が政策的に対応する必要がある。
・ そのため院内医療メディエーターの配置促進を支援する対策、ADRの多様性へのニーズを踏まえ、多様な民間ADRを国が間接的に支援するような対策をとることが望まれる。