2次救急の拠点化の是非について

2次救急の拠点化について、厚労省官僚と、現場の医師・舛添大臣との間で食い違っていることを如実に表す報道が続いています。

以下、時系列で代表的なものをご紹介いたします。


●6月10日 厚生労働省の「救急医療の今後のあり方に関する検討会」の第5回会合において、二次救急医療機関について、事務局から「地域救急拠点病院」(仮称)の創設、整備が提案された。

キャリアブレイン 2008/06/10 19:53
「地域救急拠点病院」整備を提案─厚労省
http://news.cabrain.net/article/newsId/16516.html

 

●二次救急の集約化に乗り出した厚労省に、現場から「拠点病院をつくることで、行政の問題までも現場にかぶせようとしている」との批判が上がる。
日本救急医学会の有賀徹理事は、「それぞれの地域の実情を見ないまま、全国一律に地域救急拠点病院をつくっても機能しない」と反論。地域が既に構築している救急体制を崩壊させるとの懸念を示した。


●6月18日 舛添大臣のビジョン発表 「地域全体でトリアージを行い、院内の各診療科だけでなく、地域全体の各医療機関の専門性の中から、病状に応じた適切な医療を提供できる医療機関または院内の診療科へ効率的に振り分ける体制を整備」

キャリアブレイン 2008/06/19 22:38
「救急拠点病院、現場を崩壊させる」
http://news.cabrain.net/article/newsId/16722.html

 

●6月24日 舛添大臣が江戸川区医師会の1次・2次救急の取り組みを視察し、『拠点病院という「箱物」をつくればいいというものではない、「人のネットワーク」が大切だ』と発言

キャリアブレイン 2008/06/25 21:11
救急体制、「ハコ」より「ネットワーク」―舛添厚労相、現場を視察
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/16789.html

 

●7月1日付メディファクス 救急「拠点化」を強調する記事

『2次救急機関の実態把握を本格化 今年度から厚生労働省』

 厚生労働省は今年度、2次救急医療機関の大成や実績などに関する調査を本格化させる。これまで、主に病院群輪番制病院と共同利用が他病院としていた「救急医療対策事業の現況調」の対象を、都道府県医療計画で2次機関と位置づけられた施設に整理するほか、医師数のみに限られていた体制に関する調査も充実させる。
 厚労省は救急に関する診療実績や体制を評価し、一定の要件を満たす医療機関を「地域救急拠点病院(仮称)」として整備する寄航の検討に入っている。「現況調」を充実させることで、具体的な評価の在り方を検討する上での基礎資料にもしたい考えだ。

 

●7月2日 現場のマネージメントを長年されてきた有賀 徹先生のインタビュー
『拠点病院という「箱モノ」は「厚労省のおもちゃ箱」であり、一種の責任逃れの道具』


m3医療維新 昭和大学救急医学教授・有賀徹氏に聞く
「2次救急の拠点化」では問題は解決せず "箱モノ"の整備は行政の責任転嫁の懸念、地域の実情踏まえ多角的考察を
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080702_1.html


(以下、一部抜粋です)

 ――厚生労働省の「救急医療の今後のあり方に関する検討会」では、診療体制や活動実績などについて一定の基準を満たしている2次救急医療機関(仮称:地域救急拠点病院)の整備が検討されています。

 「拠点病院」という新たな箱モノを作っても、何も問題は解決しません。
 その理由は幾つかあります。(1)救急医療には「入口」の整理が必要ですが、それが現状では実施されていない、(2)救急医療の「出口」についても一体化して議論する必要がある、(3)地域によってニーズは異なり、全国一律の拠点病院の整備には無理がある――などです。

(中略)

 ――では現時点では、どんな方策を講じればいいのでしょうか。

 初めから「拠点病院ありき」の議論ではなく、その地域の各病医院が持っている機能を考え、それが最大限に発揮できるようなネットワーク作り、あるいは不足している機能を補填する施設作りを進めるという丁寧な議論が必要です。  
 
 先日、舛添要一・厚生労働大臣が視察した東京都江戸川区には、基幹となる大規模の病院はありません(「箱モノ」を作るより、現場の医師に手当を)。中小規模の医療機関がネットワークを組み、「この病気ならこの病院」などと上手く機能分担して、地域医療を「面」で支えています。これが一つの理想系でしょう。

 ただし、現状では、救急医療は経営的には決して楽ではありません。ですから、補助金や診療報酬上での手当が必要です。例えば、救急担当医が1人増えれば、当直回数を減らすことが可能になり、医師の負担は軽減されます。まずお金を付ける。それをどのように使うかは、各病院や地域に任せるべきです。