がん臨床研究に不可欠な症例登録を推進するための患者動態に関する研究
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分担研究報告 福島県・茨城県・東京都・島根県における
       造血器悪性疾患の診療体制に関する研究



考察

福島県、茨城県、東京都、島根県の4都県の造血器悪性疾患についてその推定罹患者数を算出し、基礎的人口動態データと比較した。これらの4都県に共通して、人口密度と類似して罹患者数が増加している一方で、単位人口当たり推定罹患者数は高齢人口割合の高い地域で高値を示す傾向にあった。単位人口当たり推定罹患者数が多い地域はまた、過疎地域自立促進特別措置法にて指定されている地域と類似した。今後、人口高齢化が進行するに従い、都市地域と比較して相対的に過疎地域で造血器悪性疾患患者の増加率が高くなることが予想される。
 福島県の推定罹患者数は福島市、郡山市、いわき市を中心とした都市地域で多い傾向であった。それぞれが含まれる2次医療圏は県北・県中・いわき保健医療圏である。単位人口当たり推定罹患者数は県南・南会津・相双医療圏で多く、これらの地域では65歳以上高齢人口割合が高く、過疎地域に指定され、越後山脈や阿武隈高地が存在する中山間地域である。また、これらの単位人口当たり推定罹患者数が多い地域では、高速自動車道や鉄道といった交通網の整備は進んでいない。
 茨城県の人口密度や65歳以上高齢人口割合は、他の府県と比較して地域による差異が小さい。県北部の常陸太田・ひたちなか医療圏を除いて、単位人口当たり推定罹患者数は比較的均等な分布を示している。単位人口当たり推定罹患者数が多い常陸太田・ひたちなか医療圏は過疎地域に指定され、八溝山地が迫っている。
 東京都の推定罹患者数の分布は都心を囲むドーナツのように江戸川区、足立区、北区、板橋区、練馬区、杉並区、世田谷区、大田区にて高値を示している。単位人口当たり推定罹患者数は奥多摩地域で多い。都心では、台東区、荒川区、北区において単位人口当たり推定罹患者数がやや多い。これらの地域では65歳以上高齢人口割合が20-25%と他の特別に対してやや高い。図示はしていないが、東京都島しょ地域は、中山間地域に類似した患者分布であった。ただし、御蔵島村、青ヶ島村、小笠原村については高齢化割合が低く、単位人口当たり推定罹患者数も少ない傾向にあった。
 島根県は県北部に位置する松江市周辺に人口が集中しており、この地域での推定罹患者数は多い。一方で高齢化割合は県中部の大田医療圏、県南部の益田2次医療圏で高く、単位人口当たり推定罹患者数も同地域で多い。県中部には浜田自動車道及び三江線が横切っている。

結論

福島県、茨城県、東京都、島根県について造血器悪性疾患の推定罹患者数を算出し基礎的人口動態データと比較した。いずれの地域も共通して、高速自動車道や鉄道といった交通網の整備が遅れた中山間地域において単位人口当たり推定罹患者数が多い。このような地域は今後、人口高齢化に伴い、相対的に罹患者数の増加が高まることが予測される。

  
このサイトに関するお問合わせ先:東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム 社会連携研究部門
(旧:探索医療ヒューマンネットワークシステム部門) 上 昌広 
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