考察
1つの3次救命救急センターを事例として取り上げ、その患者分布を調査した。病院所在地を中心とした患者分布50%範囲は、2003年4-6月では車で36.6分の範囲、2008年4-6月では38.3分の範囲であった。平成18年版救急・救助の現況(総務省消防庁)によると、覚知から医療機関等に収容するのに要した時間の全国平均は31.1分、覚知から現場到着までの所要時間の全国平均は6.5分であり、従って、現場到着から医療機関等に収容するまでの時間の全国平均は24.6分である。千葉県の同様な数値はそれぞれ、33.7分、6.5分、27.2分である。現場滞在時間や搬送に関わる移動速度など条件があり、単純にこれらの統計と比較することはできないが、調査病院の救命救急センターを受診した患者の居住地範囲は、全国平均よりも広範囲であることが示唆される。
患者分布50%範囲に関して、2003年から2008年の間に車で1.7分の距離の範囲が拡大した。医療圏では君津・長生・県外が増加した。一方、患者分布80%範囲に関して、2008年4-6月の分布は2003年の分布から縮小した。これは、館山市及びいすみ市からの来院症例が増加したためと考えられた。同院で血液透析を受診する患者の居住地の50%及び80%範囲はそれぞれ、車で21分、39分であり、救急患者の居住地範囲は透析患者のそれより大きい結果となった。
千葉県では県立佐原病院、銚子市立総合病院、国保成東病院、県立東金病院、公立長生病院で常勤医が減少し、印旛山武、香取海匝、夷隅長生医療圏を中心に医療提供体制の整備が課題となっている。救急患者分布の50%範囲が拡大したことは、これらの地域での医療提供体制の変化が影響した可能性がある。
結論
千葉県鴨川市に位置する3次救命救急センターを受診にした患者を事例に、その患者分布を調査した。患者の半数は病院所在地から車で35-40分圏内に在住していた。病院所在地を中心として患者分布の50%範囲は2003年から2008年の間に拡大した。印旛山武、香取海匝、夷隅長生保険医療圏を中心に中核医療機関における常勤医の減少が、患者分布の拡大に関与した可能性がある。
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