考察
現在、血液内科に関し新規薬剤や治療法が開発され診療が高度化するとともに、人口高齢化のため造血器悪性患者は益々増加し、血液内科の果たすべき社会的需要は高まっている。一方で、現実の医療供給体制は、新たに血液内科を目指す医師は少なく、限界に来ている。このように、必要性と現実の医療体制との乖離は大きく、この乖離は更に拡大していくことが危惧される。
そこで、我々は適切な診療体制を検討するために、患者動態調査に取り組んだ。本年度は京阪奈地区の3つの血液内科中核医療機関において調査を遂行した。
調査結果に示すが如く、3病院ともに病院所在地及び隣接市町村を居住地とする患者が80%以上を占めた。これは、大都市近郊の血液内科診療圏モデルとして適切であるのは都道府県単位のような広域診療圏ではなく、近隣市町村単位の診療圏を想定する必要があることを示唆している。
なお、造血器悪性疾患(急性白血病、悪性リンパ腫及び骨髄腫)の人口10万人当たり年間罹患率は23.9人であり、今回の調査では一部の地域で実際の罹患者数が大きくなっている。これは調査期間を6か月とした調査精度の問題を内包しているものと考える。調査期間を1年間とすることにより精度を向上させたい。
今後、他の血液内科中核医療機関に調査協力を要請するとともに、医師動態を含んだ医療供給体制について調査する予定である。本調査研究のような造血器悪性疾患の発症とそれに対する診療体制を科学的に検討することは適切な診療体制の構築の基盤となると期待している。
結論
造血器悪性疾患の発症とそれに対する診療体制を科学的に検討することは適切な診療体制の構築の基盤となる。
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