研究目的
急性白血病やリンパ腫、骨髄腫などの造血器疾患を診療する血液内科に関して、近年、様々な新規薬剤(Fricker J. et al. Lancet Oncol. 2006, Jabbour E. et al. Semin Hematol. 2007)や治療法(Barker JN, et al. Blood 2005, Majhail NS, et al. Curr Opin Immunol. 2006)が報告され、今後、このような動きは更に加速すると思われる。従って、一般社会から期待される診療内容は益々高度化すると予想される。一方で、新たに血液内科の診療に携わる医師(以下、血液内科医)になろうとするものは少なく血液内科診療の供給体制は十分でない(厚生労働省健康局総務課がん対策推進室、第2回がん対策の推進に関する意見交換会 平成18年12月)。このような厳しい環境下で血液内科の診療は展開されており、将来、現況の血液内科の診療体制は破綻するものと考える。
そこで我々は「血液疾患の診療体制の未来像」を具体的に示すことを目的に造血器悪性疾患患者を対象とした患者動態調査を計画し、遂行している。本稿では現在までに得られた調査結果を報告し考察を加える。
研究方法
平成18年1月から6月までに、大阪府和泉市、岸和田市及び枚方市に所在する血液内科中核医療機関を受診した造血器悪性疾患患者(急性白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫)を対象に、患者居住地(郵便番号或いは町名)を調査した。対象疾患とした急性白血病、悪性リンパ腫及び骨髄腫は既に年齢階級別罹患率が明らかである(日本対がん協会編、「がんの統計」、2005)。
(倫理面への配慮)
患者動態調査に関しては、匿名非連結化された調査票を用いて、郵便番号情報のみを収集した。本研究計画は平成18年11月、東京大学医科学研究所倫理審査委員会にて承認された。
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