総括研究報告|がん臨床研究に不可欠な症例登録を推進するための患者動態に関する研究
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分担研究報告 徳島県における造血器悪性疾患患者の動態研究



研究者


主任研究者

上 昌広 東京大学医科学研究所 探索医療ヒューマンネットワークシステム部門

研究協力者

瀧田盛仁 東京大学医科学研究所附属病院内科

研究要旨

がん治療の均てん化及び、がん臨床研究推進には医師・患者・医療機関の3者による、症例登録を円滑に遂行できるネットワークシステム及び患者動態に関するデータの構築が不可欠であり、本研究はその基盤データを提供することを目的とする。
  方法:年齢階級別罹患率が既に明らかな造血器悪性疾患(白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫)患者を対象とした。調査協力の得られた徳島県において市町村別に推定罹患数を算出し、中核医療機関の患者動態調査から得られた実際の患者分布と比較した。フィールドワークとして複数の医療機関及び関係行政機関に対してヒアリングを行った。
  結果:造血器悪性疾患の推定罹患数は徳島県全体で10万人当たり34.2人であった。徳島県における血液内科中核医療機関のうち3病院について患者動態調査を行った。いずれの病院も患者の70%以上が病院所在地から半径約25km以内に居住していた。日本血液学会認定血液専門医は23人で、そのうち73%の医師が徳島市内に勤務していた。人口10万人当たり医師数は東部T医療圏で最も多く301人、西部II医療圏で最も少なく192人であったが、これを単位面積(100平方キロメートル)で比較すると東部T医療圏で204人、西部II医療圏で11人であり、単位人口と単位面積当たりの医師数の差が大きい。ヒアリングからは(1)県南部での医療体制の崩壊、(2)医療機関や関係行政機関間の連携・調整に課題があること、(3)患者動態には地域の文化特性や環境が影響している可能性があることが提示された。
  考察:過疎地における高齢化を反映して造血器悪性疾患推定罹患数は県内全域に分布しているが、血液内科専門医は都市部に集積している。「医療過疎」は単位人口と面積当たりの医療者数の差を反映していると考えられる。医療の集約化は進行しており、今後、地元医療機関ネットワークや病院の特性に応じたセンター化の構築が課題である。

  
このサイトに関するお問合わせ先:東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム 社会連携研究部門
(旧:探索医療ヒューマンネットワークシステム部門) 上 昌広 
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