6月20日、第1回日本医学会臨床部会会議でお話しする機会をいただき、日本医師会へ行って参りました。約70学会の代表の先生方が集まる中で、厚労省案と私たち「現場からの医療改革推進協議会」案について述べさせていただきました。多くのご質問をいただくことができ、今後の活発な議論につながるのではないかとうれしく思っております。
6月8日の検討会で、前田座長が発言した厚労省案は、構造的にチェックがかからず、行政が暴走し得る危険な仕組みです。刑法学者であり、厳罰化を主張して来られた前田氏を座長に指名した厚労省の案は、刑事罰を念頭に制度設計されています。
これに対し、私たちの対案では、当事者の自律的ニーズによる調査要請によって事案の解明を行い、その結果を当事者へお返しし、当事者の多様な選択肢が可能になるため、チェック&バランスが機能する制度となります。
また、医師法21条の改正案について、追記します。 医療現場の混乱を解決するためには、21条から医療関連死を除外することが最も望ましいことではありますが、これまで様々な分野の方々と交わしてきた議論の末に、刑法との関係などから、その実現可能性があまり高くないことがわかってきました。もしも、 21条から医療関連死を除外することだけを追求すると、警察の代わりに、刑事罰を想定しつつ医療を専門に調査する組織を作り、21条の代わりに調査組織への届出義務を課さざるを得なくなります。仮に、そうなってしまうと、新たな医療専門の警察が、現状よりも多くの症例について調査に着手することが想定され、医療現場の混乱は現状よりも大きくなり、これまでよりも多くの患者さん・ご家族に、不必要につらい思いをさせることになりかねません。 しかし、今回の制度改革の発端となった問題の本質は、21条による届け出ではなく、医療が刑事罰の対象となること、具体的に最も多いのは、医療者が業務上過失致死傷罪に問われることにあります。 21条のみに目を奪われることなく、制度全体を見渡す視野をもつ必要があります。 21条から医療関連死を除外できなくても、21条の罰則が削除されれば、 21条の届け出違反について刑事罰を問われることはなくなります。医療者は、これまでのような、刑事罰を想定したプレッシャーの中で判断を迫られることはなくなります。また、専門家の多様な意見をオープンに交わせるようになれば、隠蔽する必要もなく、患者さんやご家族や医療者が最も知りたいと思っている「何が起きたのか」を解明し、患者さんやご家族にお伝えすることができるのです。
医療者が業務上過失致死傷罪に問われる可能性を否定することはできませんが、刑事罰の対象となるか否かを、まず第一に取り上げて議論することは、本末転倒ではないでしょうか。まず第一に議論すべきことは、当事者である患者さん・ご家族と医療者が、最も知りたいことを解明し、当事者に知らせることができる制度をつくることです。事実を知ったうえで、患者さんやご家族が、その後どのような道を選ぶかは、実に様々です。事実を知って了解する方、病院と協力して再発防止に取り組む活動を始める方もあるでしょうし、民事訴訟で損害賠償請求をしたり、行政処分や刑事処分を求めたりする場合もあるでしょう。解明機関や多くの専門家が、患者さんやご家族の医学的知識のサポートをすることによって、多種多様な選択肢の実現が可能になります。 ここで注意しなければならないことは、厚労省案のように、調査組織への届出義務を課し、調査組織から警察へ届ける制度とした場合、当事者のニーズは重視されず、最優先されるのは、刑事罰の対象となるか否かの判断である点です。 厚労省案と、私たちの案をよくご覧いただき、今回の制度改革の意義を、制度全体を見渡す広い視野から、国民の皆様ひとりひとりが考えていただければ幸甚です。
6月20日、第1回日本医学会臨床部会会議でお話しする機会をいただき、日本医師会へ行って参りました。約70学会の代表の先生方が集まる中で、厚労省案と私たち「現場からの医療改革推進協議会」案について述べさせていただきました。多くのご質問をいただくことができ、今後の活発な議論につながるのではないかとうれしく思っております。
6月8日の検討会で、前田座長が発言した厚労省案は、構造的にチェックがかからず、行政が暴走し得る危険な仕組みです。刑法学者であり、厳罰化を主張して来られた前田氏を座長に指名した厚労省の案は、刑事罰を念頭に制度設計されています。
これに対し、私たちの対案では、当事者の自律的ニーズによる調査要請によって事案の解明を行い、その結果を当事者へお返しし、当事者の多様な選択肢が可能になるため、チェック&バランスが機能する制度となります。
また、医師法21条の改正案について、追記します。
医療現場の混乱を解決するためには、21条から医療関連死を除外することが最も望ましいことではありますが、これまで様々な分野の方々と交わしてきた議論の末に、刑法との関係などから、その実現可能性があまり高くないことがわかってきました。もしも、 21条から医療関連死を除外することだけを追求すると、警察の代わりに、刑事罰を想定しつつ医療を専門に調査する組織を作り、21条の代わりに調査組織への届出義務を課さざるを得なくなります。仮に、そうなってしまうと、新たな医療専門の警察が、現状よりも多くの症例について調査に着手することが想定され、医療現場の混乱は現状よりも大きくなり、これまでよりも多くの患者さん・ご家族に、不必要につらい思いをさせることになりかねません。
しかし、今回の制度改革の発端となった問題の本質は、21条による届け出ではなく、医療が刑事罰の対象となること、具体的に最も多いのは、医療者が業務上過失致死傷罪に問われることにあります。 21条のみに目を奪われることなく、制度全体を見渡す視野をもつ必要があります。
21条から医療関連死を除外できなくても、21条の罰則が削除されれば、 21条の届け出違反について刑事罰を問われることはなくなります。医療者は、これまでのような、刑事罰を想定したプレッシャーの中で判断を迫られることはなくなります。また、専門家の多様な意見をオープンに交わせるようになれば、隠蔽する必要もなく、患者さんやご家族や医療者が最も知りたいと思っている「何が起きたのか」を解明し、患者さんやご家族にお伝えすることができるのです。
医療者が業務上過失致死傷罪に問われる可能性を否定することはできませんが、刑事罰の対象となるか否かを、まず第一に取り上げて議論することは、本末転倒ではないでしょうか。まず第一に議論すべきことは、当事者である患者さん・ご家族と医療者が、最も知りたいことを解明し、当事者に知らせることができる制度をつくることです。事実を知ったうえで、患者さんやご家族が、その後どのような道を選ぶかは、実に様々です。事実を知って了解する方、病院と協力して再発防止に取り組む活動を始める方もあるでしょうし、民事訴訟で損害賠償請求をしたり、行政処分や刑事処分を求めたりする場合もあるでしょう。解明機関や多くの専門家が、患者さんやご家族の医学的知識のサポートをすることによって、多種多様な選択肢の実現が可能になります。
ここで注意しなければならないことは、厚労省案のように、調査組織への届出義務を課し、調査組織から警察へ届ける制度とした場合、当事者のニーズは重視されず、最優先されるのは、刑事罰の対象となるか否かの判断である点です。
厚労省案と、私たちの案をよくご覧いただき、今回の制度改革の意義を、制度全体を見渡す広い視野から、国民の皆様ひとりひとりが考えていただければ幸甚です。